@作業療法士になるには@作業療法士暦11年の作者が語る

私の体験談~これから作業療法士を目指すあなたへ~

ある担当患者さんから届いた1通の手紙

78歳、大手術後の喪失感

その患者さんは、かつて大きな河川工事を管理する職に就いていました。その偉業は新聞に取り上げられるなどしていたそうです。退職した直後、生死にかかわる脊椎の損傷が発見され即手術となり、術後のリハビリを私が担当することになりました。

患者さんは、すっかり意欲を失い、かつての威厳はすっかり消えてなくなっていました。家族は「人が変わってしまったようだ」と話していました。私の質問には「はい」と答えるのみでした。訓練は決められた通りやるものの、誰かが声をかけるまでベッドに横たわる生活でした。

「先生の言うとおりにするのが良い」「私にはわからない」が、患者さんの当時の口癖でした。この先については何の希望も目標もないと話していました。

結局、この患者さんの訓練は進まず、車イスに乗って日中を過ごす体力が回復した時点で、自宅へ帰ることになってしまいました。

退院後に届いた手紙

大失敗に終わってしまった患者さんから、数日後、手紙が届きました。あの手紙のことは、今でも忘れることができません。「...今も、天井ばかり眺めて生活しております。大事にしていた盆栽も枯れてしまい、かろうじて自由に動く両手も、誰か他の人の手のような感じがします」

自分が作業療法士として関わり、こんな思いをさせてしまったことを心から後悔しました。作業療法が失敗に終わるということは、患者さんの人生にまで影響を及ぼすということを知った時でもありました。患者さんらしさを取り戻す日課や作業活動を何か1つでも見つけ出し、できるようになってから退院して欲しかった...

作業療法士は、人生のプロデュースをするといっても過言ではないと思います。患者さんが生きている証として実感できるような作業を生活の中に取り入れることで、毎日の生活がぐっと明るくなります。単に食事や排せつが自立していることを目指すのではなく、1人1人の個性に近づくことのできる作業療法が、もっと社会で認知されればと願っています。